小学生から英語教育が必修化されたことを始めとして、時代の変化と共に英語の重要性は増しています。
本記事では、小学校における英語の授業内容や必修化した理由について解説します。
さらに、小学生から英語を学ぶメリットやデメリット、英語教育における問題点も解説します。
小学生の英語学習に興味のあるかたはぜひ参考にしてください。
小学生の英語はいつから?
小学校での英語が必修化されたのは、2020年4月からです。
新学習指導要領が実施されて、小学校の3・4年生では「外国語活動」が必修、5・6年生では「外国語」が正式な教科に。
以前は5・6年生でも「外国語活動」と呼ばれる英語の授業もありましたが、成績はつきませんでした。
しかし、2020年度からは他の教科と同様に通知表で英語の成績がつくようになったのです。
小学校で英語が必修化になった理由
小学校で英語が必修化になった理由は、主に2つあります。
日本の英語レベルが低い
小学校で英語が必修化になった理由として、まず先進国の中でも日本の英語力が低いことが挙げられます。
2022年のTOEIC統計によると、日本の平均スコアは574点で48ヵ国中31位。隣の韓国は679点で21位でした。
また、国際教育機関「エデュケーション・ファースト」が2022年に実施した調査「EF 英語能力指数 世界111か国・地域の英語能力ランキング」によると、日本の英語レベルは111ヵ国中80位。アジアの中でも24ヵ国中14位という結果が出ています。
このような結果から、英語教育を早期化してレベルの底上げを図るための一環として、必修化になりました。
グローバル人材の育成
もう一つの理由は、グローバル人材の育成です。
現代社会はグローバル化が進み、国際的なコミュニケーションが必要となっています。
国際社会で活躍できる人材を育成するためにも英語力は欠かせません。
英語を学ぶことは、自己表現力やコミュニケーション力を高めるだけでなく、異なる文化への理解と尊重も育てられます。
小学生の英語の授業内容
小学校の基本的な授業時間は45分ですが、学校や教師の裁量によっては、柔軟な授業形式を設定できます。
例えば、一部の学校では「モジュール授業」を取り入れており、授業開始前の朝の時間帯などに10~15分程度の英語活動が行われています。
短い授業時間は、学習意欲の低下を防ぎ、生徒は意欲的に授業に取り組めます。また、繰り返し継続することで、新しいことも覚えやすくなるでしょう。
小学校の英語教育は、学年によって年間の学習時間や授業内容が変わるので、解説していきます。
小学校3・4年生は週1回程度
小学校3・4年生の英語は、外国語の音声や、基本的な表現に慣れ親しむことを目的とした「外国語活動」です。
一般的に、1回45分の授業を年に35回実施します。
授業は「聞く(やりとり)・話す(発表)」を中心として、ダンスや歌など、楽しみながらできる活動がメインです。
外国語に慣れ親しみ、外国語学習へのきっかけを高めることを重視しています。
小学校5・6年生は週2回程度
小学校5・6年生の授業では、「聞く(やりとり)・話す(発表)」に加えてさらに『読む・書く』が加わります。
「外国語活動」から「教科」に変わるため、授業内での活動や発表、テストを通して成績がつけられます。
授業の回数も増えて、1回45分の授業を年に70回実施します。
小学校の授業では、文法は教えませんが、日常で使う会話文やアルファベットを書いたりする内容が入ります。
小学校で英語教育を行うメリット
小学生から英語学習を始めることで多くのメリットが存在するのは間違いありません。
発音や聞き取る力が身につきやすい
言語学習の初期段階で、特に小学生の年齢では、言語の音を自然に吸収し、正確な発音を身につけやすいです。
また、日常的な状況で英語を聞くことで、聞き取り能力も自然と向上します。
早い段階から英語の音に触れる機会を増やすことで、発音やリスニングスキルを効率的に身につきやすくなります。
世界に興味を持つきっかけになる
小学校での英語教育は、子供たちが異なる文化や国々について学び、世界への興味や理解を深めるきっかけとなります。
英語を学ぶことで、海外の日本と異なる視点や価値観に触れる機会が増えます。
例えば、英語の授業で外国の歌を学んだり、異なる文化の祝日や習慣について学ぶことは、子供たちに多様な世界を理解し、広い視野を持つきっかけになるでしょう。
子供たちが国際的な視野を持つことを促し、将来的に国際社会で活躍するときにも役立ちます。
中学校への連携がスムーズになる
小学校から英語が必修化されると、中学校での英語教育もスムーズに進められます。
以前は、中学校で初めて本格的に英語教育を始めていましたが、小学校で既に英語の基礎を学ぶことで、中学校での英語学習はより実践的な授業が可能になります。
また、小学校での学習経験があることで、中学校に進学した時の英語学習のストレスも軽減されるとともに、より積極的に英語学習に取り組む姿勢を育む助けとなるでしょう。
小学校で英語教育を行うデメリット
小学校から英語を学ぶデメリットもあります。
他の科目を勉強する時間が減る
英語教育を必修化することで生じる懸念の一つが、他の教科の学習時間が減少する可能性です。
新たに教科が追加されるので、算数や国語、理科など他の重要な教科の学習時間が短くなるのは避けられません。
英語が嫌いになる可能性がある
英語学習が必修化されることにより、学生に英語学習が強制される状況が生じます。
その結果、一部の生徒が英語学習に対するネガティブな感情を持つ可能性もあるでしょう。
特に、成績が公開されることで生じる競争心から、英語が苦手と感じる生徒が比較的低い成績を受け入れられずに英語に対する嫌悪感を抱く可能性があります。
小学校での英語教育における問題点
英語力をつけるには総学習時間が足りない
小学校の英語教育における最大の問題は、学習時間が不足していることです。
現行の教育カリキュラムでは、英語を効果的に習得するには不十分な時間しか提供されていません。
小学校で学習する英語の時間は、3・4年生で年間約35時間、小学校5・6年生は年間70時間です。
合計4年間の英語学習時間は、210時間ですが、日本人が英語をある程度使えるようになるには、約2,200時間が必要と言われています。
2,200時間というデータは、アメリカ国務省付属の外国語研究機関FSI(Foreign Service Institute)が、英語が第一言語である国務省の研修生が第二言語の習得に費やした時間を元に、各言語の習得難易度を3段階で評価した結果によるものです。
これを考えると、現在の英語教育では約2,000時間も不足していることになります。
リスニング力や発音を身につけるには遅い
子供の語学習得力は、生まれてからの初期の年月でピークを迎えます。
言語学における一般的な理解であり、特に発音やリスニング力においては、早い段階での言語の暴露が非常に重要とされています。
そのため、小学校で初めて英語教育を始めると、そのピークを過ぎてしまい、特に発音やリスニングにおいては十分な能力を身につけるのが難しくなりがちです。
教員や地域によって指導力にばらつきがある
英語教育の成果は、教員の教授力や指導方法に大きく依存します。
英語の授業は、基本的に担任の先生が授業を行いますが、日本全国の小学校における英語の指導力は、教員や地域により大きな差が存在します。
一部の地域では、外国人の指導者を雇用したり、専門の英語教員を配置したりするなどの取り組みが行われていますが、他の地域ではそれが難しい場合も。
地域や学校により英語の質が大きく変わるという不平等な教育環境が生まれてしまいます。
また、英語に自信を持つ教員が少ないため、子供たちに適切な英語の発音や表現を教えるのが難しいという問題もあるでしょう。
今後の英語教育について
習い事ランキングに「英語」常に上位に入っている通り、これからますます格差が広がっていくと考えられます。
しかも、小学校で英語の授業が始まった時点で、できない子は苦手意識を持ってしまう可能性も出てくるでしょう。
そのためにも、できるだけ早い時期から英語に触れさせる環境を自宅で整えておくことをおすすめします。